ハゲ・薄毛と遺伝

 

薄毛は遺伝するということがわかっている

男性が薄毛になる場合、その大きな原因はAGA(男性型脱毛症)と言われるものになります。
AGAという症状は男性ホルモンのテストステロンが活性化して、5αリダクターゼと呼ばれる酵素と結合して生み出されたジヒドロテストステロンと呼ばれる物質になって引き起こされます。

 

このジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞と呼ばれる髪の毛をつくる毛母細胞に栄養を供給する細胞と結合します。
毛乳頭細胞と結合した後、ジヒドロテストステロンは脱毛因子TGF-βというものに変換されます。
この脱毛因子TGF-βにはFGF-5という因子に働きかけて、FGF-5の活動を促進する力があります。

 

なお、因子というのはタンパク質の一種で、細胞に働きかけて細胞分裂を活性化する働きを持っています。
ちなみに、FGFというのは育毛に関係する細胞の細胞分裂を活性化し、育毛を促進する働きを持つ因子になります。
FGFには11の種類がありますが、育毛を促進するという点では基本的に共通しています。
ただ、FGF-5と呼ばれている因子だけ、その働きが少し異なります。
具体的には他のタイプのFGFは育毛を促進するのに対して、FGF-5のみは脱毛を促進する働きを持っています。
脱毛因子TGF-βの働きかけによって、FGF-5の活動が活発化して髪が抜けていく、これがAGAで薄毛が進行するメカニズムになります。

 

なお、AGAという症状の発症のしやすさには遺伝が強く影響しています。
そう聞くと、「父親がハゲているから、自分もハゲるのでは…。」などと思ってしまうかもしれませんが、AGAは父親からの遺伝は影響しません。

 

むしろ重要になってくるのは母親からの遺伝です。
AGAを発症して薄毛が進行するかどうかは、母親の遺伝子にかかっているといってよいでしょう。

 

これから自分が遺伝的にAGAになりやすい体質かどうかを見極める方法について説明します。
そして、もし自分自身がAGAになりやすい体質であるということが分かったら、早めにAGA対策を進めていく必要があります。

 

 

母親から薄毛遺伝子を受け継ぐ仕組み

前の項目でAGAになりやすい体質かどうかは母親からの遺伝が関係していると述べてきました。
とはいっても、母親は女性であるためにハゲません。
母親がハゲの遺伝子を持っていてもハゲないのは、女性ホルモンに髪の毛を育てる力が備わっているためです。
そのため、母親の頭髪を見ても自分がAGAを発症しやすいのかどうかは全く分かりません。
見るべきは母親の父親、つまり母方の祖父の頭髪です。

 

母方の祖父の頭髪が薄毛の場合は要注意です。
その理由を遺伝の理論に従って説明していきます。

 

まず、人間の遺伝子の情報は染色体という形で子孫に受け継がれていくことを押さえて下さい。
この染色体にはX染色体とY染色体という2つの種類があります。
このX染色体とY染色体の組み合わせによって、男女の性別が決まります。
男性の場合はXYという組み合わせを持ち、女性の場合はXXという組み合わせになります。
女性はX染色体を2つ持ちます。

 

ちなみに、X染色体の中にだけ、脱毛の原因であるジヒドロテストステロンと結合するアンドロゲン受容体というものを作る遺伝子の情報が含まれています。
これが母方からの遺伝がAGAの発症可能性に影響する理由です。

 

では、このアンドロゲン受容体というのは一体なんなのでしょうか。
アンドロゲン受容体というのは毛乳頭細胞にある組織の名称で、生成されたジヒドロテストステロンはアンドロゲン受容体と結合します。
アンドロゲン受容体と結合した段階でジヒドロテストステロンは脱毛因子TGF-βに変換されます。

 

ただ、このアンドロゲン受容体がどのくらいジヒドロテストステロンとくっつきやすいか、言い換えるとジヒドロテストステロンへの感受性がどのくらい高いかには大きな個人差があります。
どんなにジヒドロテストステロンが大量に発生しても、アンドロゲン受容体の感受性が低く、AGAによる薄毛症状が進行しない人もいます。
逆にアンドロゲン受容体の感受性が高いため、簡単に薄毛が進行してしまう人もいます。

 

ちなみに、母方の祖父が薄毛の場合、母方の祖父のX染色体はジヒドロテストステロンへの感受性が高いアンドロゲン受容体の遺伝情報が記録している可能性が高いです。
そして、母親が持つ2つのX染色体のうち、1つは母方の祖父から遺伝しています。
そのため、母親は必然的にジヒドロテストステロンへの感受性が高いアンドロゲン受容体の遺伝情報を持っています。

 

そして、あなたが男性の場合、染色体の構成はXYという組み合わせになります。
父親からは間違いなくY染色体が遺伝しているため、自分が持っているX染色体は100%母親からの遺伝になります。
つまり、ジヒドロテストステロンへの感受性が高いアンドロゲン受容体が母親のX染色体によって遺伝する可能性が大です。
これにより、AGAを発症しやすい体質が受け継がれることになります。

 

上記のような形でジヒドロテストステロンへの感受性が高いアンドロゲン受容体の情報は母方の祖父のX染色体から、母親のX染色体、そして自分のX染色体へ受け継がれていきます。

 

 

遺伝による薄毛の症状

AGAという症状は他の薄毛症状とは違う特徴があります。
それは全体的に髪が薄くなっていくのではなく、一定の部位に薄毛症状が集中するというものです。
具体的には前頭部と頭頂部になります。
生え際がどんどんこめかみに向かって後退していくM字ハゲ、頭頂部が薄毛になるてっぺんハゲはAGAの代表的な症状として知られています。

 

ちなみに、AGAによる薄毛症状が特定部位に集中して現れるのには理由があります。
それがM字部分と頭頂部の毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体の存在です。
実はアンドロゲン受容体は全ての毛髪の毛乳頭細胞に存在するわけではありません。
アンドロゲン受容体は前頭部と頭頂部の髪の毛の毛乳頭細胞には存在していますが、側頭部や後頭部の髪の毛の毛乳頭細胞には存在していません。

 

これがAGAで特定部位に薄毛が集中する原因です。
毛乳頭細胞にアンドロゲン受容体がある前頭部と頭頂部では脱毛因子TGF-βが生成されますが、側頭部や後頭部では脱毛因子TGF-βが生成されることはありません。

 

ジヒドロテストステロンの影響を受けやすいかが遺伝によって決まる

アンドロゲン受容体の感受性が高く、ジヒドロテストステロンと結合しやすい人の方がAGAによる薄毛症状を発症しやすいことは間違いありません。
ただし、遺伝的にアンドロゲン受容体の感受性が高いことが分かったとしても、適切な対策を取れば、AGAによる薄毛症状の発症を防ぐことはできます。

 

大切なのはいかにしてジヒドロテストステロンを体内に発生させないようにするかということです。
体内にジヒドロテストステロンが無ければ、アンドロゲン受容体と結びついて脱毛因子TGF-βが生成されることはありません。
そのため、AGAによる薄毛症状を発症することも当然ながらありえません。
正しい薄毛対策を行うことにより、このジヒドロテストステロンの生成を抑えることができます。

 

 

自分が遺伝による薄毛になりやすい体質かはAGA遺伝子検査でわかる

さて、上記では遺伝によってAGAの症状を発症しやすい体質かどうかが決まると述べてきました。

 

この遺伝的にAGAを発症しやすい体質かどうかは染色体に存在するDNAの塩基配列という構造をチェックすることで分かります。
DNAというのは人間の体の設計図の役割を果たしています。
このDNAにおいて人間の体の大部分をしめるタンパク質をどのようにつくるかを示す設計図として機能するのが塩基配列になります。

 

塩基にはA(アデニン)、T(チミン)、グアニン(G)、シトシン(C)と呼ばれる4種類のものがあります。
この4つの塩基が「AUGUUCGUCAAUCAGUAG…」といったような形で並んでいるものが塩基配列といいます。
この塩基配列にしたがってタンパク質のもとになるアミノ酸が構成され、タンパク質がつくられていきます。

 

ちなみに、この塩基配列にはアンドロゲン受容体の設計図が書かれている部分も存在します。
アンドロゲン受容体の塩基配列には「CAG」・「GGC」というパターンが繰り返し出現します。
ただ、この「CAG」・「GGC」というパターンの繰り返しが遺伝的に少ない人が存在しています。
このような「CAG」・「GGC」というパターンの繰り返しが少ない塩基配列を持つ人のアンドロゲン受容体は、普通の人と比較してジヒドロテストステロンへの感受性が高いことが分かっています。
具体的にはアンドロゲン受容体の塩基配列を見たときに、「CAG+GGC≦38」となっているとAGAを発症しやすい体質であると判断されます。
逆に、「CAG+GGC≧42」になると、アンドロゲン受容体がジヒドロテストステロンと結合しづらい体質で、AGAを発症しにくいとされています。
つまり、検査結果において、「CAG+GGC」の値が小さければ小さいほど、AGAを発症しやすい体質であると判断されることになります。
ちなみに、「GGC」というパターンはアンドロゲン受容体の感受性をチェックするのみの指標になります。
ただ、「CAG」というパターンはアンドロゲン受容体の感受性をチェックするのみでなく、AGA治療薬のフィナステリドという成分の効きやすさを判断する指標にもつかわれます。
フィナステリドはジヒドロテストステロンが体内で生成されるのを抑える力を持っているAGA治療薬になります。
「CAG」というパターンの繰り返しが少なければ少ないほど、フィナステリドによるジヒドロテストステロンの抑制効果が高くなる傾向があることが分かっています。

 

 

現在ではアンドロゲン受容体の塩基配列をチェックする「AGA検査キット」というものも登場しています。
検査方法は非常に簡単です。
まず、「AGA検査キット」に付属してくる綿棒を使って頬の内側の粘膜をこすります。
これによって採取した粘膜を試験管のようなものに入れて、そのまま調査機関に送付します。
その後、2〜3週間ほどすると、自宅の方に検査報告が送付されてくるという流れになります。
自宅で出来るため、非常に手軽で費用も13,000円程度となっています。

 

また、「AGA検査キット」で自分でチェックするだけでは不安、ちゃんと病院で診てもらいたいと言う人もいると思います。
このような人はAGAクリニックを受診して、遺伝子検査を受けるという方法でもアンドロゲン受容体の塩基配列を調べることができます。

 

ちなみに、AGAクリニックでは頬の粘膜を採取する方法・血液検査をする方法の2つの方法のどちらかを選択して、アンドロゲン受容体の塩基配列を調べます。
受診したAGAクリニックによっては血液検査の方がより正確に遺伝子を検査できると言われる場合もあります。
以前はそのような意見が支配的でした。
しかし、近年は頬の粘膜・血液、どちらからDNAを採取しても得られる遺伝子の検査結果は同じになるため、特に血液検査にこだわる必要は無いという意見が主流になっています。
ただ、血液検査を行うと、遺伝子のチェックを出来るだけでなく、現在の体の健康状態をチェックすることもできます。
AGA治療薬には副作用の存在が報告されているものも多く、処方された患者の体調次第では重い副作用を引き起こす可能性があります。
また、実はAGAではなく、何らかの内科的な疾患によって薄毛症状が引き起こされている可能性もあります。
そういった観点からも事前に患者の健康状態をチェックしておくというのは大切になります。
この健康状態のチェックも同時に行うことが出来るというのが、血液検査を行うメリットになります。
ちなみに、AGAクリニックで検査を受けた場合の費用の相場は大体20,000円程度となっています。

 

 

遺伝されるのはあくまでも遺伝になりやすい体質

ちなみに、上記のような遺伝子検査を行った結果、AGAを発症しやすい体質だと判明したとします。
それでも、100%確実にAGAを発症するという訳ではありません。
あくまでもAGAを発症しやすい体質であるというだけで、しっかりとAGA対策を行っていれば、一生AGAによる薄毛に悩まない人もいます。

 

例えば、ジヒドロテストステロンが体内で発生しないような生活習慣を身に着けるというのも一つの方法です。
例を挙げるなら、食生活に大豆食品を取り入れるのもよいでしょう。
大豆食品には体内に入って女性ホルモンのエストロゲンと同じような働きをするイソフラボンが大量に含まれています。
このイソフラボンの働きにより、テストステロンの働きを弱めて、ジヒドロテストステロンの生成を抑えてやることが出来ます。

 

また、育毛剤を使うというのも一つの方法です。
市販の育毛剤には5αリダクターゼの発生を抑制するオウゴンエキスやイソフラボンが大量に含まれるヒオウギエキスを配合したものもあります。
このような育毛剤をAGA予防のために使用するというのも効果的です。
このように日常生活の中でジヒドロテストステロンの生成を抑えてやるような生活習慣を取り入れることで、AGAによる薄毛症状の発症を予防することは十分可能です。

 

自分に合った育毛剤の探し方は以下のページをご覧ください。

 

育毛剤の選び方

 

 

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